胃の疾患

食道乳頭種

胃良性疾患

胃ポリープ(胃底腺ポリープ)

胃底腺ポリープは胃粘膜にできる良性のポリープで、正常な胃の粘膜と同じ色調をしています。ピロリ菌に感染していない健康な胃粘膜にできることが多いとされています。 大きさは2~5ミリ程度で複数発生することも多く、胃がんとの関連性は低いとされています。

胃ポリープ(過形成ポリープ)

過形成性ポリープは、胃底腺ポリープと同様に胃の中でよく見つかるポリープの1つであり、ピロリ菌感染による長期間の炎症から発生した萎縮性胃炎を背景に生じることが多くなっています(下記“ピロリ菌に関して”の項を参照)。大きさは大小様々で、単発の場合もあれば複数みられることもあります。ピロリ除菌治療で、ポリープが縮小もしくは消失したとの報告もあります。過形成性ポリープは頻度こそ高くありませんが、がん化することがありますので、年に1回程度の内視鏡検査を受診すべきと考えます。

胃腺腫

胃腺腫は白色調の平坦隆起で表面は、やや桑状に観察される傾向が多い病変です。 胃腺腫の多くは良性ですが、前癌病変とされ内視鏡治療が推奨されることが多いです。

グレードB

胃炎(急性、慢性)

胃炎には大きく急性胃炎と慢性胃炎に大別され、急性胃炎は主に過度のストレス(自立神経障害含む)、非ステロイド系の消炎鎮痛剤の長期服用、暴飲暴食(刺激物の大量摂取)、喫煙などによって胃粘膜に炎症や傷害が生じる病態です。一方で、慢性胃炎のほとんどはピロリ菌感染が原因で、ピロリ菌の感染により胃粘膜に持続的な炎症を引き起こします。(ピロリ菌の詳細は下記参照

急性(表層性)胃炎

慢性胃炎(ピロリ菌関連胃炎)

(除菌前)

ピロリ除菌前は、胃粘膜の浮腫(むくみ)と点状発赤が見られたが、除菌後はいずれの所見も改善しています。

(除菌後)

鳥肌状胃炎:
胃前庭部(出口付近)に鳥肌に似た密集した顆粒状の隆起が見られる状態で、ピロリ菌感染を伴う若い女性に多くみられる所見です。

胃潰瘍

胃潰瘍は胃の粘膜が傷害され胃壁組織を欠損された病態を言います。胃潰瘍も胃炎同様に急性と慢性があり、急性胃潰瘍は不整形の深い潰瘍やただれ(糜爛)を伴うことが多く、慢性胃潰瘍は、円形で単発する傾向があります。原因は自身の胃液・胃酸に対して胃粘膜が防護しきれず傷害され粘膜の炎症、潰瘍を生じたことによります。胃潰瘍の70%~90%はピロリ菌が原因とされています。

アニサキス症

我が国で海産魚介類の生食を原因とする寄生虫症の中で最も多発するものがアニサキス症です。一般的には鯖(しめ鯖含む)の他,アジやイワシ,イカ,また最近ではサケ、ニシン、サンマなども感染源として多く報告されている。症状は食後3~4時間して急な腹痛、嘔気や嘔吐で発症するというのがほとんどです。3~4日ぐらいで弱ってしまって、長くても1週間ぐらいで死滅するといわれています。痛みの原因はアニサキス虫体が胃壁に侵入することによる痛みだけでなく、アニサキスに対するアレルギー反応とも言われています。治療は内視鏡的にアニサキス虫体を除去のほか、抗アレルギー剤・鎮痛剤・抗ヒスタミン剤・ステロイドを症状に合わせて投与する方法があります。

感染予防として、一般的な料理で使う食酢での処理、塩漬け、醤油やわさびを付けても、アニサキス幼虫は死滅しません。マイナス20度で1日以上の冷凍か70度以上の加熱でアニサキスは死滅します。

★ピロリ菌について

正式にはヘリコバクター・ピロリといいグラム陰性桿菌に属します。大きさは0.5 × 2.5~4.0μmで、数本のべん毛を持ち胃の中を移動します。オーストラリアの教授二人がピロリ菌を初めて発見し2005年にノーベル賞を受賞しています。ピロリ菌は自らを胃酸から防御するために毒素(アンモニア)を作り、その作られたアンモニアが胃粘膜に長期的な障害を加えることで慢性的な炎症(慢性胃炎)を生じさせます。

ピロリ菌の感染経路は不明ですが、ピロリ菌の感染は、衛生環境による原因のほか、5歳ぐらいまでの間に母親から感染することが多いとされています。

胃潰瘍の方で約7割、十二指腸潰瘍では9割以上の方が、ピロリ菌に陽性反応を示します。また、ピロリ菌陽性の方は、胃がんの発生率が高いともいわれています。また、長期間のピロリ菌の感染は胃がんだけでなく胃・十二指腸潰瘍や悪性リンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病などとの関連も指摘されています

一度除菌ができれば、再感染はほとんどありません。胃がんのリスクを減らすためにも早い段階でのピロリ菌の除菌をおすすめします。

ピロリ菌の検査方法について

上部内視鏡検査(胃カメラ)と同時にピロリ菌の検査ができます。
内視鏡検査時に萎縮性胃炎があるかないかを判断し、ピロリ菌感染の疑いがあれば、PCR核酸増幅法(一番正確:当院検査可)や呼気検査、血液や便などによってピロリ菌の感染を確認します。(いずれの検査も保険適用です)
内視鏡検査でピロリ菌感染の状況が確認できるため、症状がないからと安心せず、一度は検査を受けたほうがいいでしょう。

除菌方法

ピロリ菌は、除菌薬を服用し除菌を行います。
1次治療と2次治療があり、3種類の薬を1週間服用します。
1次治療の段階で80%~90%程度の方が除菌に成功しますが1次治療の段階で除菌できなかった場合は、薬の種類を変えて2次治療を行います。必要であれば、3次治療(自費)を行う場合もあります。

胃良性疾患

胃癌

胃癌は胃炎や萎縮(衰え)をおこしている胃の粘膜から発生すると考えられています。胃の粘膜に萎縮がおこると萎縮性胃炎の状態になり、その後に腸上皮仮生(腸粘膜への変換)が生じ、癌化していく流れが判明しています。近年、この変化にピロリ菌が大きく関わっていることが明らかになりました。ピロリ菌に感染した状態が長く続くことで、胃粘膜に慢性的な炎症が起こり加齢とともに萎縮性胃炎、腸上皮化生をもたらすと考えられています。ピロリ菌の除菌により、胃炎が改善し、結果として胃潰瘍、十二指腸潰瘍のほか胃癌の発生も抑えられることもわかってきました。
近年、わが国では胃がんの発生率は緩やかな減少傾向にあるのに対し、死亡率は急激に減少しています。これは検診などの普及による早期発見、早期治療の効果であるといえるでしょう。
 胃癌は早期癌と進行癌に分類され、早期癌は胃壁の粘膜下層まで癌腫が浸潤している状態で、進行癌は胃壁の固有筋層より深くまで浸潤している状態をいいます。症状は早期癌では殆ど無症状で健康診断や胃がん検診、人間ドックなどで偶然発見されるケースが多いです。進行癌では、嘔気、痛み、体重減少、貧血、黒色便、吐血などの症状が出現することがあります。また、さらに進行した病態では腹水が貯まり腹部膨満(お腹が膨れる状態)が出現することもあります。
 胃癌の診断は、食道癌と同様に内視鏡検査をはじめX線バリウム、CT、MRI、PETなどが用いられますが早期発見には内視鏡検査が一番有効となります。内視鏡検査は病変を直接観察できることが大きな特徴です。病変の位置や大きさだけでなく、広がりや腫瘍表面の形状、色調などから、病変の深達度(腫瘍の深さ)が推測できます。また、色素内視鏡検査や狭帯域光観察によっても病変の広がりや良性・悪性の判定が可能となっています。最終的には、病変から直接組織を採取し(生検)、病理検査(顕微鏡)で癌診断することで診断が確定します。病変が明らかに粘膜下層より深く浸潤している場合は、周囲リンパ節や他臓器転移を確認するために超音波内視鏡やCT、MRI、PETなどを用いて病期(ステージ)診断をします。
 治療はステージによって異なり、腫瘍が胃粘膜から粘膜下層浅層までで、リンパ節や他臓器転移がなければ一般的に内視鏡治療が優先されます。内視鏡治療は経口内視鏡を用いて病変を取り残しがないように周囲の正常組織と共に一括切除します(EMR・ESD)。胃癌も食道癌と同様に病変が多発することが認められますが、同時に複数病変を切除することも可能です。一方で、病変が粘膜下層深層から筋層の深部まで深達している場合や他臓器転移含め高度進行している場合は、手術や化学療法が選択され、各治療方法を組み合わせた集学的治療も病期よって標準治療になっています。

参照:国立がん研究センター中央病院HP
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/gastric_surgery/050/010/index.html

早期胃癌

症例1(同一患者)

症例2(同一患者)

通常光
色素染色
特殊光(NBI)

進行胃癌

胃腫瘍(その他)

胃粘膜下腫瘍

腫瘍が粘膜の下に存在し、表面が正常粘膜に覆われ正常粘膜が盛り上がっているように見える病変です。胃の粘膜下腫瘍の多くは、食道粘膜下腫瘍と同じく平滑筋腫という良性の腫瘍(子宮筋腫と同じ腫瘍)が大半です。一方で消化管間葉系腫瘍(GIST)と呼ばれる粘膜下腫瘍も胃に発生することが多く、良性のものから転移を起こすものまで悪性度も様々です。他に迷入膵、カルチノイド(NET:神経内分泌細胞腫瘍)、脂肪腫なども胃粘膜下腫瘍に分類されます。胃粘膜下腫瘍は食道病変と違い症状は無症状のことが多く、バリウム検査や内視鏡検査で偶然見つかることが大半です。治療は有症状(痛み、嚥下障害など)や、短期間で増大傾向の場合は手術的な腫瘍摘出(小さい場合は内視鏡治療)が優先されます。但し、悪性腫瘍が疑われる場合は胃癌に準じた治療も検討されます。

平滑筋腫

消化管間葉系腫瘍(GIST)(同一症例)

異所性膵

異所性膵とは、膵臓と全く違う臓器に膵臓の組織が紛れ込んでしまうもので「迷入膵」とも呼ばれます。 良性病変で、特に胃の出口付近や十二指腸などが好発部位です。 無症状であり、切除する必要もありません。

機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia:FD)

機能性消化管障害とも呼ばれます。胃・大腸カメラなどで特異的な所見が認められないにも関わらず、胃もたれや心窩部痛、満腹感、嚥下時違和感、逆流感、下痢・便秘などのつらい症状を繰り返す病気です。ピロリ菌感染が原因となる事もありますが、ストレスや胃の知覚過敏、食道や胃腸の機能に問題があると考えられています。治療はピロリ菌の除菌治療のほか、ストレスの軽減や生活習慣の改善と共に内服治療が効果的な場合もあります。消化器症状で病院に受診される患者さんの多くが機能性ディスペプシアであることがわかっています。この疾患は、生命に関連する大病ではありませんが、症状が強いことも多く生活に影響します。

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