食道疾患

食道乳頭種

食道良性疾患

食道乳頭種

食道上皮由来の1cm未満の小隆起で白色の粒状、房状の隆起が集簇する構造を認めます。一般的には癌化することは極めてまれで治療は不要で経過観察が可能です。

食道顆粒細胞腫

食道粘膜下腫瘍のうち約5%を占め、好発部位は中下部食道であり、内視鏡所見としては、中央がわずかに陥凹した黄色調または白色調隆起性病変であり、大臼歯様と表現されます。殆どが良性であり経過観察で問題ありませんが、嚥下障害などを呈する増大傾向にある場合は治療(内視鏡切除ほか)が必要となります。

逆流性食道炎

胃酸や胆汁を含んだ胃の内容物が食道に逆流することにより、食道粘膜に炎症を起こす病気です。食道の粘膜は胃酸や胆汁に対し弱いため、長時間にわたり胃食道逆流が生じると食道に炎症を起こすようになります。 治療は基本的に内服治療(制酸剤)になりますが、著明な食道裂孔ヘルニアを合併している(下記“食道裂孔ヘルニア”の項を参照)、炎症が高度で食道狭窄生じている(グレードE)などの場合は、手術治療が必要となることもあります。

グレードA
グレードB
グレードC

バレット食道

慢性的な胃酸や胆汁などの逆流によって傷害された食道粘膜が、その修復・治癒過程で食道本来の扁平上皮が円柱上皮に置き換わった病態を言います。円柱上皮の長さによってSSBE(Short Segment Barrett`s Esophagus)とLSBE(Long Segment Barrett`s Esophagus)に大別されます。日本人の大半はSSBEで発癌リスクは殆どありません。日本人に占める食道癌のうちバレット食道に起因するものは1割未満ですが、食生活の変化で増加傾向が見られます。悪性所見が見られなければ、経過観察で問題ありませんが悪性所見が見られる場合は、治療(内視鏡または手術治療)が必要となります。

症例1
症例2

好酸球性食道炎

好酸球性食道炎のほかに好酸球性胃腸炎もあり、食物を含む物質が抗原となってアレルギー反応がおこり、食道あるいは胃/腸に好酸性の白血球が浸潤して慢性炎症を引き起こし、食道や胃腸の正常な機能が障害される疾患です。好酸球性食道炎では、胸痛、胸やけ、嚥下障害、食物のつかえ、腹痛などの症状がみられます。現時点では明確な治療指針がない状態ですが、軽症であれば制酸剤の内服をするか、治療抵抗性であれば抗アレルギー薬やステロイド剤の内服治療を行うこともあります。

食道静脈瘤

食道粘膜の下にある静脈が瘤のように拡張し膨隆する病気です。内臓臓器(胃、小腸、大腸、脾臓など)から肝臓に戻ってきた血液が、肝臓疾患(肝硬変など)により受容できなくなり(門脈圧亢進症)、胃・食道静脈へ逆流し結果的に静脈拡張を呈した状態です。脾臓腫大の原因ともなります。静脈瘤の程度により血管が破れて出血することもあり、その場合は緊急治療が必要となります。

食道カンジダ

通常の皮膚や粘膜にいるカンジダという真菌(カビ)の1種で、免疫力が低下した時に食道粘膜に感染を起こした状態です。画像上は食道粘膜に白い苔が斑状に散在している所見として観察されます。程度が軽く免疫力が戻れば自然に治ることもありますが、治療が必要な場合には抗真菌薬を用います。食道感染が高度になるとガンジダ増殖による炎症が起き、胸焼け、飲み込む際の違和感や痛み、胸のつかえ感、しみる感じといった症状を生じることがあります。舌や口腔粘膜にもカンジダ菌は増殖することがありますので、普段から口腔内チェックを励行してください。

食道憩室

食道壁の一部が嚢状に外側に突出している状態で、食道入口部、食道中部、横隔膜上に発生が見られやすくなっています。基本的に症状(嚥下障害、逆流、嘔吐、痛みなど)がなければ経過観察で問題ありません。

咽頭食道憩室
気管分岐部憩室
横隔膜上憩室

食道裂孔ヘルニア

本来、腹腔内に位置する胃の一部が腹圧や胃内容の物理的圧排により横隔膜の上(口側)に滑り脱出した状態を言います(下図○印が脱出した胃の一部)。
治療は生活習慣の改善を優先的に行います。食生活に関しては、食べ過ぎ、早食い、食後直ぐに横になる習慣がある方は、食道・胃接合部(噴門)が緩みやすくなりますのでご注意ください。その他、亀背(背骨が丸くなる)やベルト・コルセットなどの腹部の締めつけは、いずれも腹圧が上昇する原因となりますので、食生活と合わせてご留意ください。逆流症状があり、胸やけなどの逆流性食道炎症状を合併している場合も多いので、その際は制酸剤などの薬物療法も併用します。(“逆流性食道炎”の項を参照)
ただし、上記治療で改善が見られない場合や逆流症状の程度によっては手術療法を推奨する場合があります。手術治療は基本的に脱出した胃を腹腔内に戻し、再脱出しないように脱出孔の縫合閉鎖またはメッシュ(網状人工布)で閉鎖と胃の逆流防止機構の修復を行います。現在では、体表を傷つけることなく通常の内視鏡でヘルニアを修復する新しい手術方法も行い始めています。

●食道悪性疾患

食道癌

日本人の罹患する食道癌の90%以上は、食道粘膜を構成する重層扁平上皮から発生する癌であり、そのほかにバレット食道粘膜(上記バレット食道”の項参照)から発生するバレット腺癌が8~9%、希少癌が残りを占めています。ただ、食道腺癌は欧米では食道癌の60~70%を占めており、食生活の欧米化に伴い日本でも今後増加する可能性があります。食道癌の危険因子としては、喫煙、アルコール飲料、熱い食べ物と飲み物、タンパク質、ビタミン、ミネラルの不足した食生活が関係あると言われています。特に飲酒・喫煙は食道癌発生の高度な危険因子とされており、特に飲酒によって顔が赤くなる人(フラッシャー)で長期の飲酒歴がある場合は、食道癌のハイリスクとなっています。
症状は、早期において食物や熱い物の通過時にしみる感じや、違和感を覚える場合もありますが大概は無症状の場合が多いです。ただ、癌の進行とともに飲食時の胸の違和感、つかえ感、体重減少、胸や背中の痛み、咳、嗄声(声のかすれ)などの症状が出てきます。食道癌の診断には、内視鏡検査をはじめX線バリウム、CT、MRI、PETなどが用いられますが早期発見には内視鏡検査が一番有効となります。内視鏡検査は病変を直接観察できることが大きな特徴です。病変の位置や大きさだけでなく、広がりや腫瘍表面の形状、色調などから、病変の深達度(腫瘍の深さ)が推測できます。また、色素内視鏡検査(ヨード染色)や特殊光(NBI)観察によっても病変の良性・悪性の判定が可能となっています。最終的には、病変から直接組織を採取し(生検)、病理検査(顕微鏡)で癌診断することで診断が確定します。病変が明らかに粘膜下層より深く浸潤している場合は、周囲リンパ節や他臓器転移を確認するために超音波内視鏡やCT、MRI、PETなどを用いて病期(ステージ)診断をします
治療はステージによって異なり、腫瘍が食道粘膜から粘膜下層浅層までで、リンパ節や他臓器転移がなければ一般的に内視鏡治療が優先されます(ステージ0期、一部のI期)。内視鏡治療は通常の内視鏡を用いて病変を取り残しがないように周囲の正常組織と共に一括切除します(EMR・ESD)。食道癌は病変が多発することもしばしば認めますが、同時に複数病変を切除することも可能です。一方で、病変が粘膜下層深層から筋層の深部まで深達している場合(ステージI期~Ⅲ期)は、手術をはじめ放射線や化学療法が選択され、各治療方法を組み合わせた集学的治療も病期よって標準治療になっています。
参照:日本食道学会HP(https://www.esophagus.jp/public/cancer/05_stage.html

早期食道癌

症例1(同一患者)

通常光
ヨード染色
特殊光(NBI)

症例2(同一患者)

通常光
ヨード染色
特殊光(NBI)

進行食道癌

症例1
症例2
症例3
●食道腫瘍(その他)

食道粘膜下腫瘍

腫瘍が粘膜の下に存在し、表面が正常粘膜に覆われているので下記症例のように正常粘膜が盛り上がっているように見える病変です。食道の粘膜下腫瘍の多くは、平滑筋腫という良性の腫瘍(子宮筋腫と同じ組織)であることがほとんどです。症状は無症状のことが多く、バリウム検査や内視鏡検査で偶然見つかることが大半です。治療は有症状(違和感、痛み、嚥下障害など)や、短期間で増大傾向の場合は手術的な腫瘍摘出(小さい場合は内視鏡治療)が優先されます。但し、悪性腫瘍が疑われる場合は食道癌に準じた治療も検討されます。

症例1
症例2

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